『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』を読んだ

ずる―嘘とごまかしの行動経済学

ずる―嘘とごまかしの行動経済学

前著『予想どおりに不合理』で一躍行動経済学の存在を知らしめたダン・アリエリーの著。

Kindleで安かったから買ったのをしばらく積んであるうちに、オボちゃんのアレとかがあって急にテーマがタイムリーになった感がある。

内容はタイトルの通り、人はなぜ不正行為に走るのかを行動経済学(というかほぼ心理学的な実験)の観点から明らかにするもの。

不正行為を「行為から得られる利益」と「行為が発覚する確率と、発覚した場合のペナルティ」の大小という古典的な費用便益計算の枠組みで捉えるのが支配的だったのが、著者の主張によれば実際はそうではなく、「自分は立派な、正直な人間でありたい」という願望と、「不正行為から利益を得たい」という欲望のせめぎあいによって人は不正を働いたり、働かなったりするんだよ、というのが主題。

ちょっと偉そうなことを言うと、古典的経済学の合理的判断の枠組みではなく、心理学的な「理性と欲望の葛藤」という観点で不正行為を捉え直すだ試みすね。

正直、前著と比べると項目の羅列っぽくてあまり面白みがなかったんだけど、いくつか参考になりそうなことがったので挙げとく。

  • 精神的、肉体的に消耗していると不正しやすくなる
    • 不正行為から利益を得たいという欲望を抑える理性の力は、使えば使うほど消耗してしまうらしい
  • 一度ちょっとした不正を働くと「どうにでもなれ」と雪崩式に不正を働いてしまう傾向がある
  • 「どうにでもなれ」効果を防ぐためにはリセットの仕組みが大事

特に最後の論点が面白かった(本書では「いま研究中だよ」ってなっててあまり触れられなかったが)。

罪悪感を背負い続けていると精神的にも消耗するし、「どうにでもなれ」と更なる不正を続けてしまう。 それならいっそ、罪をリセットする機会を作ることで、むしろ以後罪を犯しにくくなる、という発想。

そもそも宗教は人間の欲望を抑えて社会的秩序を保つことが大きな役割だから、宗教的儀式にはいろんなヒントが隠されてるんだろうなあ。