2017年下半期に読んだ本たち
数えてみると全15冊。上半期よりペースが落ちている。くやしい
上半期と比較するとプログラミングやデータ分析から徐々にプロダクト開発(「どう作るか」ではなく「何を作るか」の観点)や組織、経営に興味が移りつつある。果たして今年はどうなることやら
例によって読んだ順ではなくカテゴリ別で
データ分析
- 作者: 井手剛,杉山将
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/08/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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分野としては異常検知、変化検知限定なんだけど手法的には機械学習の各種手法のオールスター感があって腕試しにとても良い。単なる手法の解説にとどまらず背景理論の説明や他分野との比較まで踏み込んでおりそこもとても良い。
が、たまに(章の最後の補足部分が特に)レベルが突然上がって数学弱者にはとてもつらくなったりするがその部分は本筋の理解には関係なかったりするので読む側にも取捨選択するリテラシーが求められる。
それを差し引いてもすごく良い本。レベルとしてははじパタを数式丁寧に追いながら読んだ経験があれば食らいつけるかな、ぐらい。
- 作者: 岩波データサイエンス刊行委員会
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/02/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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これも単体としてはいいと思うんだが↑の異常検知本を読んだ後だと内容がかなり被ってる(で、もちろんMLPシリーズの方が踏み込んで書かれてる)ので個人的には読まなくてよかった。が、岩波DSの存在意義は広く薄くだと思うので別にこの本は悪くない。読んだ順番を間違えた私が悪いのだ(急にどうした)。
グラフをつくる前に読む本 一瞬で伝わる表現はどのように生まれたのか
- 作者: 松本健太郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/09/23
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グラフ表現の奥深さはこの業界にいる人間なら誰しも実感していることと思うが、感や経験で各種グラフ表現のユースケースはある程度把握しているものの、本来あるはずの理論的背景が分からず困る、というのも実感している人が多いのではないか。
こうした課題に答えてくれる、ありそうでなかった本。
と、この点に関してはすごくいいのだが、後半のデータジャーナリズム云々でやってる分析が(紙幅の都合もあろうが)とっっっっても浅くて「そりゃないだろ」という出来なので後半いらなかったんじゃないか説。
社会科学
社会シミュレーション ―世界を「見える化」する― (横幹〈知の統合〉シリーズ)
- 作者: 横幹〈知の統合〉シリーズ編集委員会
- 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
- 発売日: 2017/09/20
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社会科学研究におけるシミュレーションの応用について概観した本。買う前から薄々感づいてはいたんだが数理社会学シリーズを何冊か読んだ後なので特に真新しい内容はなかった。これも私の選択ミスである。これ以上この分野深めたいなら論文読め。
ビジネス
サブカテゴリ掘った方がいいんじゃないかと思うぐらいこのカテゴリの比重が高まってきたのが今期の特徴
- 作者: Linda Gorchels,新井宏征
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2006/12/05
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本来は消費財メーカーにおけるいわゆる製品開発をターゲットに書かれてるんだが、ソフトウェア開発やWebサービス開発にも当然応用できるだろうと手に取った。
ポジショニングと「何をやらないか」を決めるのマジ大事という当然のお話。あとプロダクトマネジャーの果たすべき役割や仕事について網羅的に書かれてるがこれ全部1人でやるとどう考えても死ねる分量なので、実際にはプロダクトマネジャーはこのうち一部だけ管掌していて他の役割は各機能別組織が担ってるのが実像なんだろうけど、そこをどう割り振って権限移譲していくかはどう考えてもマジ難しい。つらみ。
- 作者: P.F.ドラッカー
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: 単行本
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ドラッカー読むならこれが一番いいと同僚に勧めらたので読んだ。ことドラッカーについてはちょいとした付け焼き刃で理解した内容をここで開陳しても恥を晒すだけなので詳しくは書かないけど、とにかくミッションが大事という点とチャレンジしたいメンバーにはとことんチャレンジさせて責任はお前が取れ、でもってチャレンジしようとしないやつはほっとけ、という点が心に残っている。
- 作者: 中田敦
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/06/13
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GEがシリコンバレーのやり方をとことん模倣してデジタル製造業として復活したという話。正直大手にここまでやられたら吹けば飛ぶようなベンチャーに勝ち目はあるのかと思えてしまう。
てかこれだけは言いたいんだけどスタートアップの成功パターンってのは絶対に存在していて、もちろん不確実性があるから成功パターンなぞれても結果として確実に成功するわけではないんだけどそれを言い訳にして楽をして模倣すらしないできない輩が多すぎるんじゃないですかね。
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: 単行本
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大きい会社や巨大プロジェクトじゃないと大きな成果を挙げられないとか幻想だよ、という主張の本。言いたいことは分かるがちょっと「人と違うこと言いたい」欲が強すぎて読んでるうちに大企業だってそんなに悪いところじゃないよ! と大企業の人でもないのに言いたくなってくる不思議。
それはともかくとして、↑や↓の本とも繋がるんだけどプロダクト開発で大事なのは引き算だから削ぎ落として考えようよ! という点だったり小さいチームなら小回りも効いて軌道修正しやすいから状況の変化にも柔軟だよねという点だったり学びは多い。
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
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今更読んだのかと呆れられそうだが今更読んだ。自分の理解としてはリーン・スタートアップとは突き詰めると「現実と向き合う」ということ。頭の中の素晴らしいアイデアは現実ではない。それどころか顧客の言うこと自体もそれは現実ではない。現実は顧客の行動にしかないのでそことちゃんと向き合いましょうよ。でもって現実が当初思い描いていた計画と違ってもそれは恥でも何でもなく当然のことなのでピボット(方針転換)しましょうよ、というお話。
要所要所で出てくる「計画をどんなに効率的に遂行したってその計画自体が間違ってたらどうすんの? 計画通り失敗してどうすんの?」という煽りがつらい。
人文
- 作者: 鶴間和幸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/09/19
- メディア: 新書
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積読消化プロジェクトその1。近年の出土資料に基づいて『史記』をベースにした通説を見直しましょうぜというお話。 『諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家 (中公新書)』でも最近新資料出まくりって書いてあるんだが中国が経済発展しまくって開発が進んでるから文字通り土に埋没してた資料が出てきてるとかそういう話なんだろうか。
- 作者: 桜井英治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/11/24
- メディア: 新書
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積読消化プロジェクトその2。こちらは新資料とかではなく既存資料を丹念に読み込んで中世日本の贈与のあり方を浮き上がらせようという話。読んでて思ったのは中世日本の研究者でもモースとかその辺の人類学の贈与論に言及するの当たり前になってるんだなという点。てか読者も知ってて当然でしょという体で話してくる。
あとやっぱりマルクス史観からの脱却。今が進んでる時代で昔(あるいは周辺)は遅れてるなんて誰が決めたんだバカヤローというお話。最近はてな界隈で日本は中世だって馬鹿にする向きがあるがそれって西欧近代こそが最先端で進んだ社会であり空間的時間的に離れた場所は遅れてて野蛮な未開人たちの世界だと暗に言っててそれはマルクス史観以外の何物でもないんだが君たち大丈夫か。今は2018年だぞ。
小説
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/02/06
- メディア: 文庫
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- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/07/06
- メディア: 文庫
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第四部の文庫版が出たので第一部から読み直すなどしていた。この辺になると初期のハイテンション感は薄れていくんだけど、そのぶん著者の文章力と資料に裏付けされた説得力(恐らくこの人全部原著読んでる)とが際立ってくる。巨人たちが死にまくるんだけど特に周瑜と関羽の死は泣ける。特に関羽の死(とうか死後)の描写は凄すぎてたぶんこんなの書けるの世界で酒見賢一だけだろうなと思う。三国志に少しでも興味があった人は手にとってみるべし。長いけど。
たぶん2年後ぐらいに第五部の文庫版が出ると思われるがそこでまた最初から読み直すんだろうな。
その他
- 作者: 三十六代木村庄之助
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2014/01/09
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- 作者: 33代木村庄之助
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2015/11/25
- メディア: 文庫
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相撲が好きなんです。好きだから最近の騒動には胸を痛めているんだが、何が一番胸が痛むかって協会が問題ある組織なのはそりゃそうなんだけどその中には当然真面目に頑張ってる人もいるし最近は真摯に相撲に取り組む若手も増えてきて成長している中で、普段ろくすっぽ相撲見てないクセに(見てないからこそ?)「あんな腐った組織早く潰れろ。大相撲なんてなくなれ」と簡単に吐き捨てる輩の存在。
自分が興味ないもの=社会に必要のないもの ではない。自分が興味なくてもそこに強い興味を持っている人、人生を預けている人はたくさんいるんだという想像力を失わずに2018年は生きていこうと思う。
なんだこの本の内容とは一切関係ないまとめは。